増値税:納税義務の発生時点

注:本稿は2019年8月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

 

【はじめに】

2019年春、2018年に続き増値税法の改正があり、物品売買取引に関する主な税率が16%から13%に変更となりました。2019年の変更は2018年の経験(17%から16%に変更)があるため、税率が思ったより大きく変動したという以外にお客様のオペレーション上は余り混乱が生じなかったように思います。

 

このような増値税率の変動は今後も急に発生する可能性があります。

今号では、今後のため増値税率の変動のたびに論点となる「いつの時点の増値税率を使うべきか」について整理してみたいと思いますのでご参考ください。

 

 

 

 

【いつの時点の増値税率を使うべきか】

 

この論点は税法上それなりに整備された話である一方、極めて実務的な問題にもなりやすい分野となります。実務上起こりうる話として、たとえば

・3月中に税率16%で見積もりを出して合意したのに商品の引渡は4月を越えた。その場合に税率13%が適用されるのか?

・契約書に税率変更の場合の記載がないがどうすべきか。

といったことがあり得ると思います。こういった問題にすべて結論を示しているわけではありませんが、税法上は以下のように「増値税納税義務の発生時点」の問題として規定されています。つまり、上に例示したような各種の問題については、納税義務の発生時点をまず確定し、その時点における増値税率を使用すべきということになります。

 

1)物品の販売、加工修理修繕役務、有形動産リースサービス、物品の輸入

増値税暫定施行条例

第19条 増値税納税義務の発生時点:

(一)物品の販売または加工修理修繕役務の発生のときは、売上代金を受領したまたは売上代金請求書を取得した当日とする。先に発票を発行した場合には、発票を発行した当日とする。

(二)物品を輸入したときは、輸入通関をした当日とする。

増値税の源泉徴収義務の発生する時間は、納税者に増値税の納税義務が発生した当日とする。

 

増値税暫定施行条例実施細則

第38条 条例第19条の第一款第(一)項に規定する売上代金を受領したまたは売上代金請求書を取得した当日は、販売の決済方法により同一ではなく、具体的には以下の通り:

(一)直接売上代金を受領する方式の物品販売については、物品の搬送の有無にかかわらず、売上代金を受領したまたは売上代金請求書を取得した当日とする。

(二)代金回収又は銀行に委託して代金回収する方式の物品販売については、物品を搬出し代金回収手続を委託した当日とする。

(三)割賦販売または延払方式の物品販売については、契約書に規定した売上代金受領の当日とし、契約書のない場合または契約書上売上代金受領の期日の規定がない場合には物品を搬出した当日とする。

(四)代金の前受を行う方式の物品販売については、物品を搬出した当日とする。但し製造販売の製造期間が12か月を越える大型機械設備、船舶、飛行機等の物品販売については、前受金を受領した日または契約書上の代金受領期日の当日とする。

(五)他の納税者に委託して物品を販売する場合、代理販売業者から代理販売明細を取得したまたは全部または一部分の物品売上代金を受領した当日とする。まだ代理販売明細を取得しておらず物品売上代金も受領していない場合、代理販売業者に物品を搬出してから180日を経過する当日とする。

(六)加工修理修繕役務の発生の場合、役務を提供し同時に売上代金を受領したまたは売上代金請求に関する根拠を取得した当日とする。

(七)納税者が本実施細則第四条第(三)項から第(八)項に規定する物品のみなし販売が発生した場合、物品を移送した当日とする。

 

2)課税サービス、無形資産の譲渡または不動産の販売

営改増試点実施弁法(財税201636号)

第四十五条 増値税の納税義務、源泉徴収義務の発生時点は次の通り。

(一)課税行為が発生し売上代金を受領したまたは売上代金請求書を取得した当日とする。先に発票を発行した場合には、発票を発行した当日とする。売上代金の受領とは、納税者が課税サービス、無形資産の譲渡または不動産の販売の過程で又は完了後に受け取った代金を言う。

売上代金請求書を取得した当日とは、契約書で確定した支払日を指す。

契約書を未締結または契約書上支払日が未確定の場合、課税サービスまたは無形資産の譲渡が完成した当日または不動産の権利帰属の変更が行われた当日とする。

(二)建築サービスにおいて前受金を受領する方式の場合、前受金を受領した当日とする。

(三)金融資産の譲渡に従事する場合、金融資産の所有権の移転が行われた当日とする。

(四)本弁法第十四条に規定する状況の場合、課税サービスまたは無形資産の譲渡が完成した当日または不動産の権利帰属の変更が行われた当日とする。

(五)増値税の納税義務が発生した当日を増値税源泉徴収義務の発生する時点とする。

 

これらの規定中には、税務実務上重要となる前受金が長期放置されることの問題点についてもふれられています。

 

今後も増値税率の変更はあり得ると思われるため、上記規定を参考に

・契約書を締結する

・そもそも税込で契約しているのか税抜きで契約しているのかを明確にする。

・特に税込・税抜両方の金額を明記して合意する場合に、契約書中に税率変更に関する条項を追加する

・売上にかかる請求書と発票の送付・発行時点を明確にする

といった対応が考えられます。このような書面上の対応は無用な取引先との摩擦を避けるために有効であると思われます。

 

次号では、値引きや返品のあった場合の増値税法上の取り扱いについて整理してまいります。

 

本稿の執筆時点は次の通りです:2019810

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特段制限なし