増値税:値引きと赤字発票の発行

注:本稿は2019年9月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

 

【はじめに】

前号は増値税実務の基本論点として、増値税率の変動のたびに実務上の焦点となりやすい「いつの時点の増値税率を使うべきか」について整理しました。

 

関連論点として、今号では値引き、販売の中止や返品があった場合についての取り扱いを以下の順番でご説明します。

① 値引き、販売の中止や返品があった場合についての増値税法上一般的取扱い

② 値引き、販売の中止や返品があった場合で税率変更があるときの取り扱い

③ 赤字発票を発行する場合の具体的操作

 

 

 

 

 

【値引きや返品があった場合の一般的取扱い】

 

増値税暫定施行条例実施細則

第11条 一般納税人が販売物品の返品又は値引により買い手に返金する増値税額については、販売物品の返品又は値引が発生した当期の売上増値税額から控除しなければならない。購買物品の返品又は値引により受領した増値税額については、購買物品の返品又は値引が発生した当期の仕入税額から控除しなければならない。

一般納税人の物品販売または加工修理修繕役務を提供し、増値税専用発票を発行した後、販売物品の返品又は値引、発行間違い等の状況が発生したとき、国家税務総局の規定により赤字増値税専用発票を発行しなければならない。規定により赤字増値税専用発票をまだ発行していない時は、増値税額を売上増値税額中から控除してはならない。

 

 

増値税若干具体問題の規定 

国税発[1993]154

二、(二)納税者が物品販売で値引きをするとき、売上額と値引き額が同じ発票上に区分して明示されているとき、値引き後の売上額を以て売上増値税の課税対象としてよい。もし値引き額が別の発票で発行されているとき、会社の財務上の処理の如何に関わらず、売上額から値引額を控除することは出来ない。

 

 

値引きにより増値税課税売上を減額する問題に関する通知

国税函[2010]56

「納税者が物品販売で値引きをするとき、売上額と値引き額が同じ発票上に区分して明示されているとき、値引き後の売上額を以て売上増値税の課税対象としてよい。」について。納税者が物品販売で値引きをするとき、売上額と値引き額が同一の発票上に区分して明記するとは、売上額と値引き額が同一発票上の「金額」欄に区分して明示されていることを指し、値引き後の売上額を以て売上増値税の課税対象として良い。同一発票上の「金額」欄に値引き額が明示されず、発票の「備考」欄に値引き額が明示されているだけのときは、売上額から値引額を控除できない。

 

 

 

営業税改正増値税試点実施弁法

第四十二条

納税者が課税行為を発生し、増値税専用発票を発行した後、発行間違えや販売の値引き、中止、返品等の状況が生じたとき、国家税務総局の規定に基づき赤字増値税専用発票を発行しなければならない。規定に基づき赤字増値税専用発票を発行していない時、本弁法三十二条と三十六条の規定に基づき売上増値税または売上額から控除することは出来ない。

第四十三条

納税人が課税行為を発生し、代金と値引き額を同一の発票上に区分して明記するとき、値引き後の金額を以て売上額とする。同一の発票上に区分して明記していない時、代金を以て売上額とし、値引きすることは認められない。

 

 

【値引きや返品があった場合で増値税率が変更となる場合の取扱い】

 

2019年春の増値税改革の際に、税率の変更を跨いで値引き、販売の中止や返品があった場合についての取り扱いが明示されました。その公告の関連個所を抜粋します。

前号の納税義務発生時点の論点を踏まえれば難解ではないかと思いますし、第三項の「手修正により元の税率を適用し増値税発票を発行してよい。」と言う部分は実務上ポイントとなります。

 

増値税改革深化に関する関連事項の公告

国家税務総局公告2019年第14

一、増値税一般納税人が増値税率の調整前既に元の税率を適用し増値税発票を発行していて、値引きや販売の中止、返品等の状況が発生し赤字発票の発行が必要となる場合、元の税率を適用して赤字発票を発行する。発票の発行に誤りがあり新たに発行し直す場合、元の税率を適用して赤字発票を発行した後、新たに正確な黒字発票を元の税率に基づき発行する。

 

二、納税者が増値税税率の調整前に行った増値税発票を発行していない増値税課税行為で、増値税発票を発行する必要のある場合、元の税率に基づき発行しなければならない。

 

三、増値税発票の税控開票ソフトウェアの税率欄に表示されている調整後税率は、納税者が本公告第一条、第二条に基づき発行し直すまたは追加発行をする場合、手修正により元の税率を適用し増値税発票を発行してよい。

 

四、税務総局は増値税発票税控開票ソフトウェア中の「商品とサービス税収分類番号表」を更新したので、納税者は更新後の「商品とサービス税収分類番号表」に基づき増値税発票を発行しなければならない。

 

 

【赤字発票の発行】

 

上では赤字発票の発行プロセスについて触れられていますが、具体的には状況により以下の2つの発行の流れが考えられます。

 

1)売り手が増値税専用発票を買い手にまだ交付していない場合や、買い手がまだ仕入税額控除を申告しておらず且つ発票聯と控除聯を返還する場合、売り手が増値税発票管理システム中「赤字増値税専用発票発行情報表」を記載アップロードし、元の税率に基づき赤字発票を発行します。

 

2)買い手が増値税専用発票を取得し既に仕入税額控除を申告している場合、または買い手が専用発票を取得して仕入税額をまだ控除していないが発票聯と控除聯を返還できない場合、買い手が増値税発票管理システム中「赤字増値税専用発票発行情報表」を記載アップロードし、売り手が買い手の「赤字増値税専用発票発行情報表」に基づき元の税率で赤字発票を発行します。

 

 

「赤字増値税専用発票発行情報表」はアップロードされると税務局システムにおいて自動認証が行われ、通過後赤字発票情報表番号が明示されます。赤字発票の内容と認証通過した「赤字増値税専用発票発行情報表」の内容は一致すべきであり、電子情報又は紙資料を税務調査に備え証憑として保存するのが適切となります。

 

次号も増値税の論点の続きとしまして、仕入増値税の認証に関する実務的論点を整理します。

 

本稿の執筆時点は次の通りです:2019810

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特段制限なし

 

《香港澳門台湾居住民の中国(大陸)国内における社会保険加入に関する暫定施行方法》

文 件 名:《香港澳门台湾居民在内地(大陆)参加社会保险暂行办法》

   :人力资源和社会保障部 国家医疗保障局 令 第 41号

链    http://www.mohrss.gov.cn/gkml/zcfg/bmgz/201911/t20191130_344467.html

 

主要内容

  • 在内地(大陆)就业居住和就读的香港特别行政区、澳门特别行政区居民中的中国公民和台湾地区居民(以下简称港澳台居民依法参加社会保险和享受社会保险待遇用人单位依法聘用、招用港澳台居民的,应当持港澳台居民有效证件,以及劳动合同、聘用合同等证明材料,为其办理社会保险登记。
  • 港澳台居民办理社会保险的各项业务流程与内地(大陆)居民一致。
  • 社会保险行政部门或者社会保险费征收机构应当按照社会保险法的规定,对港澳台居民参加社会保险的情况进行监督检查。用人单位未依法为聘用、招用的港澳台居民办理社会保险登记或者未依法为其缴纳社会保险费的,按照社会保险法等法律、行政法规和有关规章的规定处理
  • 本办法自202011起施行。

 

 

 

 

文書名:《香港澳門台湾居住民の中国(大陸)国内における社会保険加入に関する暫定施行方法》

文書番号:人材資源及び社会保障部 国家医療保障局 令 第 41号

リンクhttp://www.mohrss.gov.cn/gkml/zcfg/bmgz/201911/t20191130_344467.html

 

内容

  • 中国(大陸)国内で就業、居住、就学する香港特別行政区、澳門特別行政区に居住する中国国民及び台湾地区居住者(以下港澳台居住者と呼ぶ)は法律に則って社会保険に加入し、社会保障を享受できる雇用者は社会保険に登録するため、法律に則って募集及び採用した港澳台居住者の有効な証明書、労働契約及び雇用契約等の証明文書を保管しなければならない。
  • 港澳台居住者の社会保険の各種手続きは、中国(大陸)の居住者と同じである。
  • 社会保険行政部門または社会保険費徴収機関は社会保険法の規定に基づいて、港澳台居住者の社会保険加入状況を検査及び監督しなければならない。雇用者が法律に則らずに港澳台居住者である職員のために行った

社会保険の加入手続きや、法律に則らずに納付した社会保険費につては、社会保険法などの法律、行政法や関係する規定に基づいて処理するものとする。

  • 本規定は2020年1月1日より施行する。

 

《財政部税務総局個人所得税総合所得確定申告に関する政策問題に関する公告》

文件名:《财政部税务总局关于个人所得税综合所得汇算清缴涉及有关政策问题的公告》

  :财政部 税务总局公告2019年第94号

  :http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810755/c5141235/content.html

主要内容

一、2019年1月1日至2020年12月31日居民个人取得的综合所得,年度综合所得收入不超过12万元且需要汇算清缴补税的,或者年度汇算清缴补税金额不超过400元的,居民个人可免于办理个人所得税综合所得汇算清缴。

二、居民个人填报专项附加扣除信息存在明显错误,经税务机关通知,居民个人拒不更正或者不说明情况的,税务机关可暂停纳税人享受专项附加扣除。

三、本公告第一条适用于2019年度和2020年度的综合所得年度汇算清缴。

 

 

  • 翻译日文如下:

 

文書名:《財政部税務総局個人所得税総合所得確定申告に関する政策問題に関する公告》

文書番号:財政部税務総局告示2019年第94号

リンク:http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810755/c5141235/content.html

内容

1、2019年1月1日から2020年12月31日までの間に、居住者個人が取得した総合所得は、年間の総合所得の収入が12万元を超えずかつ税金の追加納付をしなければならない、または年度確定申告による追加納付金額が400元を超えない場合、住民個人は個人所得税の総合所得確定申告をしなくてもよい。

 

二、居住者個人が申告した所得控除項目に明らかな誤りがある場合、または税務機関からの通知を経ながら居住者個人が修正申告を拒否する場合、または適切な説明を行わない場合、税務機関は納税者が所得控除を享受することを一時停止することができる。

三、本公告第一条は、2019年度と2020年度の総合所得確定申告に適用される。

日中社会保障協定発効:概略と背景の解説

注:本稿は2019年8月の樱智而望企业管理咨询(上海)有限公司顧客向けレポートに掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で一部の図表が壊れておりますもしくは省略しますのでご了承ください。

【はじめに】

かねてから時々ニュースや話題となっている日中社会保障協定(以下、本協定と言います)については2019年9月1日より発効となり、協定発効日の1か月前である8月1日より事務手続き(日本年金機構における適用証明書の交付申請の受付)が開始できるようになっています。
これに伴い2019年7月までに日中社会保障協定の実務手続き面が明確に整理され、早速準備を始められている会社さんがあります。ここで、本号では現状を鑑みながら実務上の論点を解説していきたいと思います。

※本稿では各地の社会保険加入の現状に基づき解説をしておりますが、社会保険加入義務がある場合にその社会保険に加入しなくてよいことを勧める趣旨は全くございませんので、念のため申し添えます。

【本文】

 

(1)日中社会保障協定の概要

本協定の概要として特に重要な点は次の2つです。

・本協定は主に両国の年金制度への強制加入に伴う年金保険料の「二重負担の解消」について規定しています。「年金加入期間の通算」についての規定は含まれておりません。

・本協定の対象は「年金制度」のみであり、日本は国民年金、厚生年金保険が対象となり、中国は職工基本養老保険が対象となります。よって、中国側の医療保険・労災保険・失業保険・出産保険と言ったその他の社会保険については対象外となります。

 

 

 

よって、当然ながら「二重負担の解消」の前提として、日中で二重に社会保険に加入していることが当然となります。

 

 

本協定の対象外となる者

・現地法人雇用の中国籍職員

・現地法人雇用の日本籍職員

 

本協定の対象となる者

・駐在員のうち、日本と中国の社会保険に共に加入している職員

 

 

本協定適用による概念図

・二重負担の解消期間は原則5年とされていますが、延長が可能とされています。

・現在駐在中の駐在員も本制度に基づく適用証明書提出後から適用可能です。

 

Source:

https://www.shanghai.cn.emb-japan.go.jp/files/000493841.pdf

日・中社会保障協定説明会 厚生労働省年金局国際年金課

日本年金機構事業企画部国際事業グループ (以下の画像も同ソース)

 

 

(2)過去の経緯

中国にいらっしゃる駐在員の方も代替わりされていることが多いため、2011年の「中華人民共和国社会保険法」の施行前後の動きをここで改めて解説いたします。

2011年以前は、外国人が中国で就労する場合中国の社会保険に加入することは任意とされていました。それが、2011年に「中華人民共和国社会保険法」が公布され社会保険体系が整備されると、外国人についても「外国人が中国国内にて就業する場合は、本法の規定を参照して社会保険に加入する。」(第97条)と規定されるようになりました。

当時北京、江蘇省の蘇州等、遅れて広東省の各都市も、外国人が社会保険に強制加入すべきことが規定されたものの、上海市と大連市ではローカル規定で公布されないまたは出たが撤回されたという事象があり、結果として多くの外国人が中国の社会保険に加入しないという経緯があった模様です。

 

 

 

関連法規:

「中国国内で就業する外国人の社会保険参加暫定弁法」(人力資源社会保障部令16号)

「人力資源及び社会保障部我が国国内で就業する外国人が参加する社会保険業務関連問題に関する通知」(人社庁発[2011]113号)

「北京市で就業する外国人が参加する社会保険の関連業務操作問題に関する通知」(京社保発[2011]55号)等

「我が市で就業する外国人が参加する社会保険業務の完成に関する通知」(蘇人保規[2012]1号)等

「広州市人力資源社会保障局広州市地方税務局和菓子で就業する外国人が参加する社会保険関連事項に関する通告」(穗人社通告[2012]16号)等

 

そのような経緯があったため加入の有無については大きな変動がそこからない模様で、上海や大連では中国ローカルの社会保険を享受したい中国籍(身分証保有)の駐在員の方が加入するケースが主だった模様です。

 

その後に大きな関連法規の制定・変更はありませんが、現状は上海市社会保険局であっても「中国現地法人と契約締結している外国人も中国の社会保険の加入対象である」と回答するのが一般的ですので、法整備面は変更がないものの運用面では変化してきていると解釈できるかもしれません。

 

(3)いくつかのケースを考察

駐在員のこの種の論点は個人の事情も絡んで千差万別ですが、上述の通り地域性もあって一概にまとめあげるのが難しい状況です。以下では、いくつかの代表的なケースに基づく一般的な結論を考察します。

 

・日本籍の駐在員の方で、日本と中国の社会保険双方に加入している場合:

現地法人へ在籍出向される日本籍の駐在員の方で出向元企業が出向者の給与を負担していない場合であっても、駐在中日本の社会保険に継続加入されていないケースはほぼないかと考えられます。それは、いずれ日本に戻られたときに日本にいた場合といない場合で退職後の年金に差が出るのはおかしいという考え方からであって、駐在中日本の年金制度に日本勤務時と同等の水準で加入しなければならない訳ではありません。

この場合、本協定のメリットを享受し二重負担を解消することになります。

 

・中国籍の駐在員の方で、日本と中国の社会保険双方に加入している場合:

会社として特に年金部分について二重負担するのは望ましくないため、本協定のメリットを享受し中国側の年金制度の加入免除を行うか、日本側の加入を取り下げるようご本人の契約形態等を変更するか、どちらかの決定を行うことができるようになると解されます。

 

・中国の社会保険に加入している駐在員と加入していない駐在員が企業グループ内に混在している場合(大陸に複数拠点を持つ会社等):

日本側から見て本協定を適用する駐在員がいたり適用しない駐在員がいたりするのはやや奇異であるため、統一して中国の社会保険に加入したうえで本協定により二重負担を解消するのが自然な解釈かと思います。

 

・現地採用の日本籍従業員:

本協定の対象外となります。

 

なお、本協定(日本と中国の社会保障協定)は最初に述べた通り2019年9月に発効するものですが、中国と他国との同様の二国間協定はドイツや韓国等各国と既に発効の実例があり、日中の社会保障協定の施行により、中国社会保険局サイドとして外国人全体の社会保険加入実務に変更があるとは思えません。

 

(参考)

加入免除に関する手続き概略

(略)

適用証明書申請書記入上の注意点

(略)

本稿の執筆時点は次の通りです:201986

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特に期限なし

増値税:納税義務の発生時点

注:本稿は2019年8月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

 

【はじめに】

2019年春、2018年に続き増値税法の改正があり、物品売買取引に関する主な税率が16%から13%に変更となりました。2019年の変更は2018年の経験(17%から16%に変更)があるため、税率が思ったより大きく変動したという以外にお客様のオペレーション上は余り混乱が生じなかったように思います。

 

このような増値税率の変動は今後も急に発生する可能性があります。

今号では、今後のため増値税率の変動のたびに論点となる「いつの時点の増値税率を使うべきか」について整理してみたいと思いますのでご参考ください。

 

 

 

 

【いつの時点の増値税率を使うべきか】

 

この論点は税法上それなりに整備された話である一方、極めて実務的な問題にもなりやすい分野となります。実務上起こりうる話として、たとえば

・3月中に税率16%で見積もりを出して合意したのに商品の引渡は4月を越えた。その場合に税率13%が適用されるのか?

・契約書に税率変更の場合の記載がないがどうすべきか。

といったことがあり得ると思います。こういった問題にすべて結論を示しているわけではありませんが、税法上は以下のように「増値税納税義務の発生時点」の問題として規定されています。つまり、上に例示したような各種の問題については、納税義務の発生時点をまず確定し、その時点における増値税率を使用すべきということになります。

 

1)物品の販売、加工修理修繕役務、有形動産リースサービス、物品の輸入

増値税暫定施行条例

第19条 増値税納税義務の発生時点:

(一)物品の販売または加工修理修繕役務の発生のときは、売上代金を受領したまたは売上代金請求書を取得した当日とする。先に発票を発行した場合には、発票を発行した当日とする。

(二)物品を輸入したときは、輸入通関をした当日とする。

増値税の源泉徴収義務の発生する時間は、納税者に増値税の納税義務が発生した当日とする。

 

増値税暫定施行条例実施細則

第38条 条例第19条の第一款第(一)項に規定する売上代金を受領したまたは売上代金請求書を取得した当日は、販売の決済方法により同一ではなく、具体的には以下の通り:

(一)直接売上代金を受領する方式の物品販売については、物品の搬送の有無にかかわらず、売上代金を受領したまたは売上代金請求書を取得した当日とする。

(二)代金回収又は銀行に委託して代金回収する方式の物品販売については、物品を搬出し代金回収手続を委託した当日とする。

(三)割賦販売または延払方式の物品販売については、契約書に規定した売上代金受領の当日とし、契約書のない場合または契約書上売上代金受領の期日の規定がない場合には物品を搬出した当日とする。

(四)代金の前受を行う方式の物品販売については、物品を搬出した当日とする。但し製造販売の製造期間が12か月を越える大型機械設備、船舶、飛行機等の物品販売については、前受金を受領した日または契約書上の代金受領期日の当日とする。

(五)他の納税者に委託して物品を販売する場合、代理販売業者から代理販売明細を取得したまたは全部または一部分の物品売上代金を受領した当日とする。まだ代理販売明細を取得しておらず物品売上代金も受領していない場合、代理販売業者に物品を搬出してから180日を経過する当日とする。

(六)加工修理修繕役務の発生の場合、役務を提供し同時に売上代金を受領したまたは売上代金請求に関する根拠を取得した当日とする。

(七)納税者が本実施細則第四条第(三)項から第(八)項に規定する物品のみなし販売が発生した場合、物品を移送した当日とする。

 

2)課税サービス、無形資産の譲渡または不動産の販売

営改増試点実施弁法(財税201636号)

第四十五条 増値税の納税義務、源泉徴収義務の発生時点は次の通り。

(一)課税行為が発生し売上代金を受領したまたは売上代金請求書を取得した当日とする。先に発票を発行した場合には、発票を発行した当日とする。売上代金の受領とは、納税者が課税サービス、無形資産の譲渡または不動産の販売の過程で又は完了後に受け取った代金を言う。

売上代金請求書を取得した当日とは、契約書で確定した支払日を指す。

契約書を未締結または契約書上支払日が未確定の場合、課税サービスまたは無形資産の譲渡が完成した当日または不動産の権利帰属の変更が行われた当日とする。

(二)建築サービスにおいて前受金を受領する方式の場合、前受金を受領した当日とする。

(三)金融資産の譲渡に従事する場合、金融資産の所有権の移転が行われた当日とする。

(四)本弁法第十四条に規定する状況の場合、課税サービスまたは無形資産の譲渡が完成した当日または不動産の権利帰属の変更が行われた当日とする。

(五)増値税の納税義務が発生した当日を増値税源泉徴収義務の発生する時点とする。

 

これらの規定中には、税務実務上重要となる前受金が長期放置されることの問題点についてもふれられています。

 

今後も増値税率の変更はあり得ると思われるため、上記規定を参考に

・契約書を締結する

・そもそも税込で契約しているのか税抜きで契約しているのかを明確にする。

・特に税込・税抜両方の金額を明記して合意する場合に、契約書中に税率変更に関する条項を追加する

・売上にかかる請求書と発票の送付・発行時点を明確にする

といった対応が考えられます。このような書面上の対応は無用な取引先との摩擦を避けるために有効であると思われます。

 

次号では、値引きや返品のあった場合の増値税法上の取り扱いについて整理してまいります。

 

本稿の執筆時点は次の通りです:2019810

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特段制限なし

 

《増値税発票の管理等に関する公告》

文 件 名:《关于增值税发票管理等有关事项的公告

   国家税务总局公告2019年第33

链    http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810755/c5138164/content.html

主要内容

  • 增值税一般纳税人取得海关进口增值税专用缴款书(以下简称“海关缴款书”)后如需申报抵扣或出口退税,通过登陆本省(区、市)增值税发票选择确认平台(以下简称“选择确认平台”)查询、选择用于申报抵扣或出口退税的海关缴款书信息。(自202021起施行)
  • 增值税一般纳税人取得的2017年7月1日及以后开具的海关缴款书,应当自开具之日起360日内通过选择确认平台进行选择确认或申请稽核比对。(自202021起施行)
  • 增值税小规模纳税人(其他个人除外)发生增值税应税行为,需要开具增值税专用发票的,可以自愿使用增值税发票管理系统自行开具。选择自行开具增值税专用发票的小规模纳税人,税务机关不再为其代开增值税专用发票。(自202021起施行)

 

  • 翻译日文如下:

 

文書名:《増値税発票の管理等に関する公告》

文書番号:国家税務総局広告2019年第33

リンクhttp://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810755/c5138164/content.html

内容

  • 増値税の一般納税人が税関の輸入増値税専用の納付書(以下「税関納付書」とする)を取得した後、控除または還付を申請する必要がある場合、該当する省(区、市)の増値税発票選択確認システム(以下「選択確認システム」とする)にログインして検索する。控除または輸出還付の税関納付書の申請に用いるデータを選択する。(2020年2月1日施行開始)
  • 増値税一般納税人が取得した2017年7月1日及びそれ以降に発行された関税納付書は、発行日から360日以内選択確認システムを通して確認または税関認証申請を選択実行しなければならない。(2020年2月1日施行開始)
  • 増値税小規模納税人(その他個人は除く)に増値税課税行為が生じ、増値税専用の発票の発行が必要な場合、増値税発票管理システムを使って自分で発票を発行することができる。小規模納税人が自分で増値税専用の発票を発行することを選んだ場合、税務機関が代わりにその発票を発行することはない。(2020年2月1日施行開始)

 

駐在員の帰任に関する税務処理の明確化

注:本稿は2019年7月の樱智而望企业管理咨询(上海)有限公司顧客向けレポートに掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で一部の図表が壊れておりますのでご了承ください。

【はじめに】

前号に続き、駐在員の個人所得税税務実務を全般的に明確化する財政部・税務総局「非居住者個人及び住所を有しない居住者個人に関する個人所得税政策関連公告」(財政部税務総局公告2019年第35号、以下35号公告といいます)に基づく、駐在中の駐在員の個人所得税申告の論点について整理をします。

【本文】

今号では、期の途中で帰任する駐在員の税務処理について簡単にまとめます。

一般に駐在員は3年程度以上の任期を終え、本国に帰任するもしくは別の拠点への駐在に異動するのが一般的かと思います。着任の年に帰任するのは稀であるため、2018年以前の個人所得税実務上は「満1年以上5年未満」のカテゴリーに基づき、当該駐在員の方は帰任時まで申告を行っていました。

 

ところが、2019年からの改正所得税法においては年単位で居住者判定を行うことが明確化されたため、帰任する年において183日に満たずに帰任する場合には、その年は非居住者として申告を行うこととなりました。これは前年以前の処理と実務上大きく異なる点です。

 

 

個人所得税法 第一条

中国に住所を有する者、または住所がないが一納税年度内で中国国内に累計183日以上居住する個人は、居住者個人とする。

中国に住所がなく居住していない者、または住所がなく一納税年度内で中国国内に累計183日に満たない期間居住する個人は、非居住者個人とする。

 

 

これに伴い派生する論点として、「満1年以上6年に満たない居住者」として年の途中まで申告をしていた駐在員が急に帰任するようなケースがあげられます。

 

 

35号公告 五、(一)2

住所の無い個人が先に居住者個人として判定され、居住日数が短くなったことで居住者個人の要件を充たさない時は、居住者個人の要件に達しなくなった日から年度終了の15日以内までに、主管税務機関に対して報告をしなければならず、非居住者個人として課税所得を計算し直し、税金を追納しなければならず延滞金は徴収しない。還付の発生する場合、規定に基づいて処理をする。

 

 

なお35号公告においては、帰任後に取得したボーナスで、中国滞在期間中に属するものは中国の国内源泉所得とすることが明記されています。

 

 

35号公告 一、(二)

住所の無い個人が国内での契約履行又は職務の執行を停止し出国した後取得したボーナス又はストックオプション取得について、国内就業期間に属する分は国内源泉所得とする。

 

よって、帰任の翌月等に直ちに帰任時の確定申告として追納・還付申請をするよりは、帰任後最初のボーナス支給以降に確定申告を行う方が一般的には便宜があるでしょう。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:2019527

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

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苦境企業への社会保険料部分還付

注:本稿は2019年7月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

 

【はじめに】

社会保険料率の引き下げは今年も行われていますが、いくつかの地域の企業に対しては納付済の社会保険料の一部を補助金として返還するという実務があります。

内容について、簡単にご紹介します。

 

 

 

 

【納付した社会保険料の還付】

 

「苦境企業」を対象とした社会保険料還付の実務は地域に跨ってあるものの内容は地域によっても異なるため、以下では一般的な概念を記載します。

 

(1)人員削減を行わず、将来も行わない企業を対象とする

通常、還付の対象となる企業は一定期間内に「人員削減を行っていない」または「人員削減が僅少である」(人員の5%以下等)企業で、かつ社会保険の納付義務を果たしている企業であるようです。そういった企業のうち、一時的に生産経営が苦境に陥っているが、将来の回復については十分に有望であり、今後一年間現場工員に対する人員削減を行わないまたはあっても僅かであることを表明している企業を対象に、前年一定期間の納付済社会保険料の一定割合を企業に還付する決定がなされることが多いようです。

また、他の税目の減免が対象となることもあります。

 

(2)定量的な利益悪化指標の条件を充たす企業を対象とする

連続半年以上赤字となっている、前期比で3割以上利益が減少し続けている、等苦境企業の認定に際する定量指標は地域によってバラバラなようで、裁量もあると思われます。

 

(3)最低基数等を下回る工員がいる企業を対象とする

一部の工員の給与報酬が実際に地域の最低基数や平均給与の60%といった指標を下回っているような企業を対象とするようです。

 

(4)人力社会保障部門が主導で還付を決定する

税部門、商務部門、経信部門、財政部門と協働しながら、社会保険局が主導となるケースが多いようです。

 

(5)製造業等を対象とする

対象となる業種は製造業、建築業などの関係部門が定める「苦境業種」が基本ですが、飲食業や不動産業が含まれることもあるようです。一方で製造業のうち石油化学業や紙パルプ業等が認められないこともあります。

 

(6)年ごとに認定される可能性がある

本件実務は数年以上前からありますが、毎年地域によって認定検討が行われているようであり、今年(2019年)も中国とアメリカの貿易摩擦等の影響によって実施されている地域があります。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:2019623

 

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また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

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《生活サービス業の仕入増値税追加控除政策に関する公告》

文 件 名:《关于明确生活性服务业增值税加计抵减政策的公告

   财政部 税务总局公告2019年第87

链    http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n359/c5137752/content.html

主要内容

一、“2019年10月1日至2021年12月31日,允许生活性服务业纳税人按照当期可抵扣进项税额加计15%,抵减应纳税额(以下称加计抵减15%政策)。”原先生活服务可以加计抵减10%,现在加大了政策优惠力度加计调整为15%

二、“本公告所称生活性服务业纳税人,是指提供生活服务取得的销售额占全部销售额的比重超过50%的纳税人。生活服务的具体范围按照《销售服务、无形资产、不动产注释》(财税〔2016〕36号印发)执行。” 文件链接

http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/c2043931/content.html

 

 

文 書 名:《生活サービス業の仕入増値税追加控除政策に関する広告》

文書番号:財政部 税務総局広告2019年第87号

リンク http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n359/c5137752/content.html

内 容 

一、“2019年10月1日から2021年12月31日まで、生活サービス業に従事する納税人は、当期の控除可能な仕入増値税に15%加算し、その上で課税額から控除することができる。(以下15%加速控除政策とする)。”以前の生活サービス仕入増値税追加控除10であったが、現在15調整され、大幅優遇政策となった

二、“本広告でいう生活サービス業に従事する納税人とは、生活サービスの販売額の比重が全体の50%を超える納税人を指す。生活サービスの具体的な範囲は《販売サービス、無形資産、不動産注釈》(財税〔2016〕36号)に基づいて執行する。” 文献リンク

http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/c2043931/content.html

 

「労務報酬の個人所得税申告2019」

注:本稿は2019年6月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

 

【はじめに】

労働契約を締結した従業員に支払う給与は、給与報酬所得として個人所得税を申告します。

 

一方で、社外のアルバイト的な関与をされる方に対する報酬もよく発生します。これを労務報酬所得と言いますが、実務上イレギュラーな形で発生することが多いので意外にご質問を頂くことが多い内容です。

 

本号では、このようなケースにおける個人所得税の基本的考え方を解説します。

本号は20182月のMizuho China Weekly Newsに掲載した記事を、2019年個人所得税改正を反映して修正したものです。

【労務報酬所得:日本語】

 

(1)一般的な労務報酬の納税義務、税額計算方法

  1. 労務報酬所得の定義

労務報酬所得を得る場合には個人所得税を納税しなければなりません(個人所得税法第2条)。労務報酬所得とは、個人が設計、内装、据付、製図、化学験査、測定、医療、法律、会計、コンサルティング、講義、翻訳、原稿査閲、書画、彫刻、映画、録音、録画、演出、講演、広告、展覧、技術サービス、紹介サービス、ブローカーサービス、代行サービス及びその他の役務に従事して取得する所得を指します(個人所得税法実施条例第6条)。

 

  1. 月次源泉徴収税額の計算

労務報酬所得を支払う個人または会社は源泉徴収義務者となります。

源泉徴収義務者が居住者個人に労務報酬所得を支払う時、支払の都度または月ごとに源泉徴収納付をしなければなりません。

毎回の収入が4,000元を超えない場合には800元を差し引き、その残額を課税所得額とします。4,000元を越える場合には20%を差し引き、その残額を課税所得額とします(個人所得税源泉徴収納付申告管理弁法(試行)の発布に関する公告(国家税務総局公告2018年第61号、以下61号公告といいます)第八条)。

 

  1. 一般的な税率

労務報酬課税所得に対して比例税率を適用し、一般的な税率は20%とします(61号公告第八条)。

 

以上より、労務報酬の多くのケースについてはこれで計算が出来ます。

例えば雇用関係になくオフィスの掃除だけを手伝ってもらうような臨時工員に対し、税前で月1,000元の報酬を払うとする場合、

税額: (1,000 – 800 ) ×20%=40

手取り:1,000-40=960元

となります。

 

(2)良くある問題-グロスアップ

手取りで月1,000元の報酬を払うとする場合、

税額:(x – 800)×20%

手取り: x – {(x – 800)×20%} = 1,000

よって額面は1,050元となります。

 

(3)高額労務報酬

給与所得等との税率のアービトラージを避けるためと思いますが、労務報酬でも高額な場合には税率が20%ではなく、異なってきます。

具体的には、課税所得が20,000元を超える場合には超える部分につき30%が、50,000元を超える場合には超える部分につき40%が税率として課されます。

 

4)年度確定申告―19年からの論点

新個人所得税法の施行により、労務報酬所得は「総合所得」の一つの項目となり、年度ごとに給与報酬所得と合算の上、年間で納付すべき個人所得税を再計算することになります。よって労務報酬所得と給与報酬所得を共に得ている個人の場合には、通常納付すべき税額が予納税額と一致しないと想定されることから確定申告が必要となります。

 

例えば、上の例で月1,050元の労務報酬所得のみを得ている臨時工員の場合

 年間の課税所得は1,050×0.8×1260,0000 よって年間納付税額は0

 累計予納金額は(1,050 – 800)×20%×12600

よって600元が確定申告後個人に還付されると考えられ、会社としては手取りが月1,000元になるように設定したはずが、最終的に個人の手元に届く金額は月1,050元となることになります。

 

余談となりますが、この総合所得の概念の導入及び所得控除(专项附加扣除の概念の導入を主因として、「手取り」での契約が実務上問題となる部分が多いことから、「手取り」で契約を行っているお客様によっては税前への切替を進められております。しかし、「手取り」での契約がダメになったという意味ではない点も重要であって、誤解のないようにお願いいたします。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:201958

 

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